A3 独立分散制御に関わる新考察 川口淳一郎(JAXA) 制御システム論では、制御則、あるいは制御ゲインは、システム設計者(サーバー)が行い、それに基づいて、各サブシステムないしは各個体が行動することが求められるのが、普通である。制御される側は、制御則、制御ゲインを与えられる形態が一般的である。この考え方にたつと、各サブシステムや各個体からの要求や重要度は、システム設計者に集約されることになり、否が応でも、サーバー・クライアント間の双方向通信が要求されることになる。実は、高速の制御や大規模系では、この考え方が、システム構築を複雑化させ、また中央集中型の監視・監理システムの設置を前提とさせる大きな要因であり、ハンドリングを難しくしている。この考察で紹介する新方策は、大規模系においてとくに有効な方式で、制御される側が、制御則ないしは制御ゲインを決定する点に特徴がある。大事な点は、各サブシステムや各個体からの要求や重要度とは、まさに各サブシステムや各個体において発生し定義されるものであって、本来は、わざわざ集約される必要がない場合が多い、という観点にある。仮に、総資源たる総電力が制約されるとしたら、制御対象は、1個のスカラー量にすぎないのであるが、要求や重要度を集約した後に資源を再配分する指令をするとしたら、それは、スカラー量の制御のために、膨大な双方向通信を行うことに対応していて、極めて不合理だと言わなくてはならない。言わば、考え方のパラダイムシフトである。この考察では、この新方式の解説に加えて、大規模システムが具備すべき安定性に関わる要件を要約する。